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エネルギーハーベスティングの可能性、無電源車両検知システムへの展開

   最終更新日:    公開日: 2021/10

はじめに

近年様々なものにセンサーやネットワーク機能を有するIoT時代となってきており、今後も市場拡大が続くと予想されるが、センサー駆動のための電源供給において課題を抱えている市場が少なからず存在する。例えば大型駐車場での主な車両検知の方法は、天井設置型の超音波センサーや地中埋設型のループコイルなどが用いられている。だがこれらの検知システムは、電源線の引き回しのため、天井や地中の大掛かりな工事が設置時だけではなく撤去時も必要となり、工事費用や工期が大幅にかかってしまう課題がある。また家畜ヘルスモニタリングの分野では電池式やバッテリー式のデバイスを利用したシステムが増えているが、家畜数量が多い場合、定期的な電池交換やバッテリー充電を行うなど非常に手間がかかってしまう課題がある。

これらの課題を解決する手段の一つとして、力学的エネルギーを電気的エネルギーに変換することで、センサーや無線モジュールを駆動させる電気を生み出すエネルギーハーベスティング技術が注目されている。(図1)
アダマンド並木精密宝石株式会社ではエネルギーハーベスティングデバイス(以下EHデバイス/IoT向け発電デバイス)の開発やカスタマイズ対応、パートナー企業との協業、実証実験を通して、無電源センシング技術で電源供給のさまざまな課題解決に取り組んでいる。

図1 センサー駆動のための電源供給において市場が抱えている課題

EHによるIoTソリューションへのアプローチ

EHデバイスのコンセプト

IoTの市場で使用されている無線はBluetoothに代表されるような通信距離が数十メートルほどの無線モジュールを搭載したデバイスが広く使われているが、近い将来、数百メートルや数キロメートルと比較的長距離通信が可能なデバイスが産業、医療、福祉、交通、物流、生活、娯楽、社会インフラなど様々な分野で要望が増えてくると予想される。そのため、一つ目のコンセプトは市販されている長距離無線通信モジュールの駆動に必要な電力の発電を可能にする高出力EHの開発とした。

今後普及が予想されるIoT化の可能性がある設備、装置、生活用品などの動作は様々で、発電可能な動作方式は上下の振動方向だけではなく、ドアの開閉検知向けにヒンジや蝶番のような軸を回転する動作や、ウェアラブルデバイス向けに前後やスイングで発電する動作、人が手動でレバーを動作させ無線送信するためのプッシュ、プル動作、車いすなどゆっくり回転するデバイス向けのバータイプやカーブタイプなどが考えられる。そのため、二つ目のコンセプトは様々な動作で発電するデバイスとした。

今後のIoT化が進む分野として家畜モニタリングの市場が考えられるが、家畜といっても牛や豚など大きさや動きは様々で最適なEHの発電仕様や必要なセンサー、無線モジュールの仕様などは異なる。そのため、EHだけではなく、センサーや無線モジュールも各種選択できる仕様が望ましい、これらのことから三つ目のコンセプトは幅広いカスタマイズ性を持ったデバイスの開発とした。

これらのコンセプトをもとに開発をすすめ、その結果高出力で様々な動きで発電し、高いカスタマイズ性を有するユニークなデモ機が完成し、今でもラインナップは増えている。(表1、図2)

表1 デモ機のラインナップ

図2 デモ機のラインナップ

EHデバイスで出来ること

高出力発電が可能なEHによって、多くの用例がイメージできる。例えば、土砂崩れの危険個所の災害モニタリングデバイス用電源、漁場や養殖場管理など海洋モニタリングデバイス用電源、施設内のカートや病院内の車いすの位置モニタリング向け通信デバイス用電源など、多岐にわたる活用方法の可能性がある。

IoTソリューションへのアプローチ

電源確保が課題の分野に対し、高出力EHの活用による無電源センシングシステムの提案によって、課題解決提案を行っている。しかし、EHデバイスの提案だけでは、すぐにビジネスに結びつくことは困難であり、入念なPoC(概念実証)を行う必要がある。EH以外にまず必要なものは電源制御基板である。EHデバイスは電池やバッテリーとは異なり、電力量が時間ごとに変化するため、そのままではセンサーなどを安定的に動作させることはできない。そのため、用いるEHの単位時間あたりの電圧量や電流量などを理解し、センサーや無線を駆動させるための安定した電力に変換するICやキャパシタ、周辺電子部品で構成された電源制御基板を準備する必要がある。しかし、EHで出力され電源制御基板で安定化された電力にも電力量は限りがあるため、電力を多く消費するセンサーや無線は相性が悪くなる。特に無線は特性表や仕様表に記載されている消費電力は安定した電力供給を前提にしたものがほとんどであり、電源投入から無線送信開始までの時間や消費電力量についての記載はほとんどない。そのため、用途に合わせた複数の無線モジュールを用意し、それぞれ無線送信完了までに消費する電力量を測定し、総合的にEHと最適な無線を組み合せる必要がある。

次に、送信されたセンサー情報をどのように受け取るかの検討が必要となる。パソコン等で直接受信する場合はUSBタイプの受信モジュールを使用することで比較的容易に受信が可能となるが、クラウドサーバー等に情報を送信したい場合、クラウドサービスの準備や送信されたセンサー情報を受信しLTEなどの通信方式でクラウドに送信するIoTゲートウェイ(以下GW)の準備も必要になる。最後に、用途に合わせて可視化や分析もしくは結果などを表示したい場合、センサー情報を有効に活用できる管理ソフトが必要となる。

弊社ではEHだけではなく、センサー、無線モジュール、GW、クラウドサーバー、管理ソフトも用意し、EHデバイスからシステムまで要望に対して最適な提案が行えるよう準備しビジネスの範囲を広げている。(図3)

図3 広いビジネス範囲における様々な要望に対して最適な提案を行うための環境整備

つまりIoT分野への弊社アプローチ手法としては、IoTに必要な技術を一通り保有し、どのような市場分野や特殊な要望にも幅広く対応できるワンストップ体制にてEHのビジネス化を目指している。そのためにはパートナー企業の協力が必要不可欠で、エネルギーハーベスティングコンソーシアム加入など、企業同士の横のつながりを強化するための活動も行っている。

無電源車両検知システムへの展開

概要

現在開発を進めている無電源車両検知システムは、駐車場全体の満空情報や空き車室の情報を手軽に取得できるシステムである。車両のタイヤが無電源車両検知装置(以下、車両検知装置)上を通過することで車両検知装置自らが発電し、その電力を使い、車両の通過方向や通過車両の識別情報などの測定情報をGWに無線送信を行う。その後、GWでは車両検知装置の取得した測定情報のデータ処理を行い、クラウドサーバーにデータ送信を行う。クラウドではデータ蓄積や最適化、可視化や稼動状況分析により、施設運営社のオペレーション効率化やドライバーの利便性を向上させることが可能である。(図4)

図4 無電源車用検知システムの概要

主な特徴

無電源車両検知システムの主な特徴を図5に示す。

図5 無電源車両検知システムの特徴

自己発電により電気代ゼロ

車両検知の方法の一つとして天井設置型の超音波センサーを用いた車両検知方法がある。この超音波センサーはリアルタイムに検出するには常にセンサーを駆動させる必要があるため、センサー稼動時、電力を消費し続けている。その結果、駐車場維持費の電気代の占める割合が大きくなる。本システムはタイヤが車両検知装置を通過することで、装置の内部に搭載されている電磁誘導方式の発電デバイスが発電し、各種センサーや無線モジュールを駆動させる。よって、本システムはリアルタイム性を有しつつ外部からの電力や電池、バッテリーなどは不要である。

検知システムのワイヤレス化により配線不要

センサー情報を出力する手段として有線方式の場合、電気配線工事が必要となり、工事費や長期的な工期が発生するが、本システムは無線による送信方式のため、車両検知装置とGW間の配線は不要となる。これにより、センサー駆動の給電や検知情報送信のための配線が不要となり、配線レスの検知システムを実現している。

設置・撤去容易

車両検知装置は、アンカーボルトなどで地面に取り付けることで設置完了となるため、超音波センサー方式のような天井配線工事やループコイル方式のような地中埋込工事は不要である。よって、設置だけでなく撤去や交換も容易であり、新設駐車場だけでなく、稼動中の既設駐車場でも後付設置が可能である。また、常設設置だけでなく、短期間の調査目的のデータ取得にも安価に利用可能なシステムである。

物理的カウントにより高検知率

超音波センサー方式やループコイル方式などは非接触センシングに分類され、センサーによって車両の有無のセンシングを行う。本システムはタイヤによる車両検知装置の乗り越え動作によってセンシング、カウント(=発電)し、またセンサーによる人キャンセル機能(車両のみ検知)によって精度の高い車両検知を実現している。

リアルタイムに把握可能

超音波センサーやループコイル方式とは別の方式として、電池を有する磁気センサーを用いた車両検知方式もある。ただし、電池容量とセンシング頻度はトレードオフである。よって、電池式では常時センシングさせた場合、電池切れが懸念され、解決方法としてセンシングを1分間隔などにすることで、この課題を解決している。ただし、センシング間隔があることにより、リアルタイム性に欠け、用途によってはユーザーの要望に合わない可能性もある。しかし、本システムは車両が通過した直後にセンサー情報が発信されるため、タイムラグが生じずに、ほぼリアルタイムに車両情報の把握が可能なシステムである。

活用方法

車室管理・満空管理

駐車場運営を行う上での車室管理として、駐車スペース(車室)内に車両検知装置を設置することにより、車室毎の車両の有無が把握可能である。また、車両検知装置を駐車場の出入り口や各通路に設置し、駐車場全体や区画、駐車スペースの空きを探している車両の確認などを管理する満空管理などが主な活用方法となる。(図6)

図6 車両検知装置の活用例

履歴をデータ化、駐車場利用予測

本システムに使用するEHデバイス(IoT向け発電デバイス)の固有IDや車両の通過方向、センサーによる人キャンセル機能情報、時間などの情報はリアルタイムにサーバーに蓄積される。これらの蓄積されたデータの活用方法として、時間、曜日、天気、イベントなどの外部情報と組み合わせることで駐車場利用予測、集客予測が可能となり駐車場運営方法のサポートが可能となる。

運営最適化

これらのリアルタイムモニタリング、履歴データ化、駐車場利用予測によって駐車場の運営の改善が可能となる。例えば誘導員を有する大型駐車場では駐車場の利用状況に応じて自動で案内表示可能な電光掲示板にて誘導することが可能となり、人件費削減だけではなくドライバーにとってもスムーズな空き情報の把握、駐車が可能となる。また、正確な情報を把握することで、満車の場合に別の駐車場へドライバーを誘導するなど集客機会の損失の軽減や駐車場入場待ちの渋滞緩和に期待できる。さらに、集客分析により駐車場利用料金や場内広告料も時間、天気、イベントごとに最適な見直しが可能となる。

小規模駐車場や臨時駐車場の開設

車両検知装置の固定方法をアンカーボルト固定としたことで、工事費用の削減や工期も短縮でき、撤去時の原状回復も容易である。よって、本来駐車場には適さない小規模な土地の駐車場活用や正式着工前の土地活用、季節イベントの臨時駐車場の開設が可能となる。

導入の流れ

車両リアルタイムモニタリング

駐車場や物流倉庫での車両リアルタイムモニタリングや稼働率分析、停車時間分析などを要望されるお客様に対して、現地調査後にお試し試験を実施します。まず、車両検知装置の取り付けや通信確認、GWの送受信確認など一連の疎通確認を行います。検知率などを検証し、その後、導入前実験などを経て導入検討へ移行します。

駐車場状況把握、分析レポート

駐車場や物流倉庫の稼働状況や停車時間のおおよその状況把握を要望されるお客様に対し、最適箇所に車両検知装置を1~3か月ほど取り付け、撤去後に分析レポートを送付します。

応用・展開例

物流倉庫のトラックバースや待機スペースの在車情報管理

一般向け駐車場だけではなく、物流倉庫への展開も期待できる。大型の物流倉庫では運営の効率化が重要視されており、トラックの荷下ろしなどを行うスペース(トラックバース)の空車時間をどれだけ減らせるかが効率化のポイントの一つとなる。倉庫入場時にトラックバースが満車であり、待機場に待機しているトラックドライバーとの連携が重要であり、可視化することで、ドライバーが正確な情報を認識するとともに、誘導員も的確な移動指示を行うことができる。また、トラックバースごと、トラックごとのパラメータによる分析が可能となり、予測も含めた管理が可能となる。

省エネパーキング

車両検知システムの主流である天井設置型の超音波センサーや地中埋設型のループコイルでは、車両検知のために常時センサーを駆動させる必要があるため、長期間の駆動で消費エネルギー、消費電力、電気代などが予想以上に大きくなることがある。また、天井設置工事や配線工事、地面を掘り起こす作業やアスファルト再舗装など大掛かりな作業がある。

これに対し、弊社の無電源車両検知システムの場合、車両検知装置自体は自己発電を行うため外部電力ゼロで駆動可能である。また、配線工事不要で車両検知装置を地面にアンカーボルトで固定する方式であり、工期の大幅な短縮と施工の省力化を実現している。

よって、設置箇所が多いほど維持管理費や運用までに要する時間が短く、省エネ効果が高い。

簡易スピード検知

車両検知装置はタイヤが通過することで発電し検知情報をGWに送信、GWはその情報にタイムスタンプ(時間情報)などを付け、データを整理しサーバーに送信を行う。

この車両検知装置上を車両の前輪及び後輪が通過するため、GWには1台の通過のたびに前輪、後輪の2種類のデータが送信される。この2種類のデータには時間差があり、時間差の主な要因は、車両の通過速度と車両の前輪軸と後輪軸との軸間距離によるものである。この軸間距離を仮の値として仮定することで車両の通過スピードをGWへ送信されたデータの時間差から算出することができる。(ただし、前輪後輪の軸間距離は車両により異なるため近似値となる)

逆走検知

車両検知装置には通過方向検知センサーが内蔵されており、車室の車両有無の検知に使用する際は、入庫及び出庫と区別が可能となる。この車両検知装置を車両が通過する路面、例えば駐車場内の通路や高速道路のサービスエリア出入り口などに設置した場合、通過台数のカウントによる満車空車の管理の他に逆走の検知が可能となる。

近年、逆走による交通事故が増えており、逆走の早期検知や逆走防止策などが注目されている。本システムもその解決策の選択肢の一つである。

スマートフォンアプリ連動や表示板などによりスムーズな駐車

本システムの車両検知はリアルタイム性が高いシステムで、検知情報は瞬時にサーバーへと送られる。その情報と既存の地図アプリ、駐車場検索アプリや車両誘導のための表示板などと連動することにより、ドライバーへ正確で効率的な誘導ができ、さらに駐車場予約システムとの連携も可能となる。

自動運転やバレーパーキングに対応

確実性かつリアルタイム性を両立させた車両検知を実現することで、自動車やオペレーター、ドライバー間で駐車場内の正確な情報を共有できる。この正確な情報を基に、自動運転車の自動駐車やバレーパーキングにも対応することが可能である。

仕様(2020年9月30日現在)

実証実験駐車場での検証結果、検知精度99%以上を達成。

通過方向検知機能搭載、人キャンセル(車両のみ検知)機能搭載。(表2)

表2 無電源車両検知装置の仕様

車両検知装置のタイヤ乗り越え箇所は、高さ40㎜、奥行き150㎜。(図7)

図7 無電源車両検知装置とゲートウェイイメージ図

おわりに

本格的なIoT/M2Mマーケットが急速に拡大しつつある中で、機器を遠隔地から管理する遠隔監視や機器の予知保全、ものづくりの開発や生産の可視化などの要望が急速に高まっています。弊社では、IoTやAIを活用する前提となる的確で高い精度のデータ取得のため、エネルギーハーベスティング技術を用いた無電源センシングや省エネセンシングで社会へ貢献できる製品やシステム作りを目指して参ります。


出典:『環境発電ハンドブック 第2版』 株式会社エヌ・ティー・エス 2021年 P249

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