Orbray株式会社(旧アダマンド並木精密宝石)ブログ。技術のトレンド、製品のワンポイント、SDGsなどについて紹介していきます。

「プッシュプル締結方式を採用したフィジカルコンタクト接続による光ファイバコネクタ」がIEEEマイルストーンに認定 フェルールの製造で世界普及に尽力

   最終更新日:    公開日: 2021/06

光通信を支える部品の一つに光ファイバコネクタがあります。光ファイバコネクタが開発されたことにより、光ファイバーケーブルの接続、取り外しが簡単にできるようになりました。現在普及しているプッシュプルタイプのSC(Subscriber Connector)コネクタは、NTT(日本電信電話株式会社)が開発をおこない、1986年に実用化されています。この功績が、「プッシュプル締結方式を採用したフィジカルコンタクト(PC)接続による光ファイバコネクタ、1986年」として、技術分野における世界最大の学会であるIEEEより、世界的に権威のある「IEEEマイルストーン」に認定されました。

Orbrayは、光ファイバコネクタの主要な部品である、フェルールの製造を1980年から開始しています。特に、PC接続を実現するジルコニアセラミックス製フェルールの製造では、1987年より押出成形による製造を開始し、1989年には射出成形による高精度量産化に成功しています。今回のIEEEマイルストーン認定に際し、フェルールの製造等で世界普及に尽力したとして、感謝状と記念品(銘板のミニチュアレプリカ)をNTTより拝受しました。

優れた技術成果に与えられる世界的権威の賞

IEEE(アイ・トリプル・イー:The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略)は、世界160ヶ国以上から40万人近くの会員をもつ世界最大の専門家組織です。論文等出版、国際会議の開催、標準規格の策定などをおこない、コンピュータ、バイオ、ロボテック、通信、電子、電力、航空、などのさまざまな分野で指導的な役割を担っています。

IEEEマイルストーンは、優れた技術成果に光を当てると共に、それを生み出した技術者に対する社会一般の理解と評価を高めることを狙いとして、1983年に創設された表彰制度です。IEEEが関連する電気、電子、情報、通信分野における画期的な技術革新の中で、開発から25年以上にわたり国際的に高い評価を受け、社会や産業の発展に多大な貢献をした重要な技術業績を称えます。

過去の受賞例には、ボルタ電池や、電話の発明、エジソン研究所など、20世紀より前の、近代社会を作る基盤となった、技術や歴史的施設があります。20世紀では、トランジスタ、アポロ月着陸船、コンピュータ、インターネット発祥の地といった技術、施設が受賞しました。日本では、東海道新幹線や、電子式水晶腕時計、野辺山45m電波望遠鏡などが受賞しています。

光通信を発展させた技術

PC接続は、フェルール端面を凸球面状に研磨して、頂点どうしを押し当てることで光ファイバを接続します。反射や損失が少なく、コネクタ接続時に端面へ屈折率整合剤を塗布する必要がありません。

光通信は、1970年に実用化レベルの光ファイバ製造技術が米国で開発され、普及に向けた研究が本格化しました。光ファイバは直径が百数十μmと非常に細く、光が通るコア部分の径は、10~数十μmと非常に小さなものであり、接続の際にはズレや隙間なく正確に端面を突き合わせる必要があります。その際にコネクタ用部品として用いられたのが、円柱状の外径を持ち、中心に光ファイバを通す穴が正確に開けられたフェルールです。

フィジカルコンタクト接続が開発される以前は、フェルールの端面は平面に研磨されていました。そのため、接続した光ファイバ端面の間に隙間が発生することがあり、反射戻り光を抑制するため屈折率整合剤を塗布する必要がありました。80年代中頃に基幹となる光ファイバーケーブル網が整備され、光通信の普及が進むなか、より接続時の反射や損失が少ない光コネクタが求められるようになります。そこで開発されたのが、PC接続による光ファイバコネクタです。

また、より多くの光ケーブルを装置に接続するためには、光コネクタの高密度実装を実現しなければなりません。そのためには、着脱時にコネクタ部品を指でつまんで回転させることなく着脱できるようにする必要がありました。プッシュプル締結方式によるSCコネクタは、アダプタに押し込むだけで固定され、つまみ操作することで、片手でも簡単に引き抜くことができます。こうして開発された、プッシュプル締結方式を採用したPC接続による光ファイバコネクタは、現在も世界中の光通信機器で使用されています。

ジルコニアセラミックス製フェルールの高精度量産化で普及に尽力

Orbrayは、プッシュプル締結方式を採用したPC接続による光ファイバコネクタの普及に深く関わっています。

Orbrayでは、時計用軸受宝石の加工技術を使って、70年代後半からフェルールの開発に着手しました。1980年には、押出成形によるアルミナセラミックス製フェルールの製造を開始しています。アルミナセラミックス製フェルールは、PC接続を行う際、靭性が低く、押し当てた際に光ファイバを通す穴の縁が欠ける問題がありました。フェルールの素材は、より靭性の高いジルコニアセラミックスに変わっていきます。

ジルコニアセラミックスは、粘りが強いため研削加工が難しく、フェルールの要求精度を満たすことは非常に困難でした。加工機、加工方法の改良を重ね、1987年に押出成形によるジルコニアセラミックス製フェルールの製造を開始しています。

さらに、光通信の普及が進むことで、コネクタの需要が増大するとともに、より低コストで、大量にフェルールを製造することが求められるようになります。当時の押出成形では、素材精度のバラツキが大きく、要求サイズよりも大きめに成形し、目標寸法まで加工する必要があったためコストがかかっていました。この問題を解決するため、コスト的にも、精度的にも不利というのが当時の常識であった、射出成形によるフェルールの製造に挑みます。射出成形ならば完成形状に近い形を作れるので、素材精度を上げることができれば、工数を大幅に減らして大きなコストダウンができるのです。

しかし、微細な形状に加工された射出成形用金型へコンパウンドをムラなく均一に流し込むことは、高い技術が必要でした。Orbrayでは、既に持っていたジルコニアセラミックスの特殊形状射出成形技術を用い、試行錯誤の結果、射出成形によるジルコニアフェルールの製造に成功します。1989年より製造を開始しました。

フェルール製造により光通信の発展と安定運用を支える

光通信の発展とともに、その後もジルコニアセラミックス製フェルールの製造量は増大していきます。Orbrayでは、これに対応するため、射出成型工程にロボットを導入。1996年にはフェルール用ジルコニアコンパウンドの内製化を実施。1999年には射出成型金型の消耗品となるコアピンの内製化を実施し、量産化、コスト対応を進めてきました。2000年代に入ってからも、生産性アップ、素材精度アップを続け、加工合理化を図っています。

プッシュプル締結方式を採用したPC接続による光ファイバコネクタは、光通信の発展に大きく貢献した技術であり、今回のIEEEマイルストーン認定により、その業績が世界的にも高く評価されていることが認められました。その業績に深く関わることができたことは、大変光栄なことです。感謝状と記念品を謹んでお受けいたします。

Orbrayフェルールは、常に顧客の要望に耳を傾け、オーダーメイドの技術対応と匠の技で対応してまいりました。今後も技術と経験を活かし、光通信の発展と安定運用を支えるため、精度の厳しい低損失フェルールの製造を強化していきます。

       
   

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