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常温接合Room Temperature Bonding

単結晶やセラミックスをくっつける
~無加熱・接着剤不要~

常温接合

概要 常温接合とは?

くっつけたい物同士の表面を研磨しておいて、その上に金属薄膜を成膜し、これらの表面を合わせると一瞬にしてくっつけることができます。金属、半導体、ガラス、セラミックスなど何でもくっつけることができ、材質は問いません。くっつける物の温度を上げずに、室温でくっつけることができるので、『常温接合』と呼ばれています。
下の動画は石英ガラスのウエハ(直径2インチ, 厚さ1mm)同士を接合している様子です。ピンセットで中心部を軽く押さえただけで外側に向かって一瞬で色が変わります。これはウエハ上に成膜した金属膜が一体化して、ウエハ同士の接合が一瞬で終わったことを表しています。

常温接合の原理

先ほどの石英ガラスの例で説明します。まず真空中にてスパッタリングで、石英ガラスに密着性の良いチタンを下地膜として成膜し、その上に金を成膜します。次に石英ガラスを大気中に取り出し、金の表面同士を接触させます。金原子は拡散・再配列をして一体化し、接合が終了します。

接合技術の中での常温接合の位置づけ

下の図のように接合技術は、物を溶かして接合する溶融接合(溶接)、液体と固体の反応を利用する液相-固相反応接合、固体の状態で接合する固相接合、気体と固体の状態で接合する気相-固相接合に分類されます。このうち常温接合は、固相接合の一つに位置づけられます。

接合技術の中での常温接合の位置づけ

常温接合の特徴

常温接合では物をくっつける際に、熱をかける必要がありません。熱をかけて接合する従来の方法、例えばろう付けと比較してみましょう。下の図(a)のように、ろう付けではろう材を素材AとBの間にはさんで、ろう材が溶ける温度まで加熱して接合します。その後、室温まで冷却すると、素材の内部に応力が残ります。これは素材AとBの線膨張係数が異なり、加熱時の膨張と接合後の冷却時に収縮する度合いがAとBで異なるためです。これにより素材の反りやクラック(割れ)が生じることがあります。
一方、常温接合では図(b)のように、素材表面を研磨しておいて、真空チャンバー内で厚さナノメーターオーダーの金属薄膜を成膜します。最後に位置決めと加圧をして接合が完了します。このように熱をかける必要が無いので、接合後の応力は極めて少なく、接合の品質や信頼性を上げることができます。一般的には、半導体デバイス用のウエハとウエハの接合、光学素子の接合などに用いられています。

ろう付け(加熱による接合例):常温接合は研磨と真空チャンバー内でのスパッタリングの後、大気中で接合

当社の常温接合の特徴

当社は長年ルビーサファイアダイヤモンド、アルミナ、ジルコニア、ガーネット等の工業用宝石やセラミックスを加工・研磨してきました。当社の得意とする常温接合の素材は、これらの宝石やセラミックスになります。従来の商品の組立では、例えばプラスチックと接着剤で接着したり、金属とろう付けで接合したりしていました。もちろんこれらの接着方法でも十分な場合もありますが、用途によっては問題になる場合があります。例えば、

  • 使用温度が高温で接着剤が溶けてしまうため、接着剤を使えない
  • 高い圧力や薬液に暴露される環境で使用するため、接着剤が使えない
  • 寸法精度が極めて厳しく、接着剤やろう付けでは精度が出ない
  • 人体に埋め込むため、ろう材が人体に悪影響を及ぼしろう付けが使えない

工業用宝石やセラミックスは、耐熱性・耐圧性・耐薬品性に優れ、また生体適合性があるなど、非常にユニークな特性があります。しかし金属などと異なり、組立方法で頭を悩ますことが多いのではないでしょうか?
そこで当社は、東北大学電気通信研究所島津武仁教授と共同研究を行い、最新の常温接合技術を導入しました。この技術は、くっつけたい物同士の表面を研磨しておき、その表面に厚さがナノメーターオーダーの金属薄膜を成膜し、成膜面同士を重ね合わせることで物同士をくっつけることができます。 当社では従来からサファイアウエハを研磨する技術がありました。薄いウエハではウエハ自体がある程度反ることができるため、ウエハをピンセットで押すだけでほとんど加圧すること無く接合することができます。一方、耐圧性が要求されるような厚みの厚いサファイアでは、表面を研磨する技術に加えて、全体の形状を平坦にする技術が必要です。分厚いサファイアでは、接合時にウエハのように反ることができないためです。そこで新たに平坦研磨技術を確立することにより、分厚いサファイアでも最小限の加圧で接合することに成功しました。 研磨の詳細は受託研磨加工をご覧ください。

厚いサファイア同士の接合では通常の加圧では平坦度は大きいが接合強度は低下。Orbrayの平坦度を小さくする技術により、軽加圧で本来の接合強度が得られる

常温接合のメリット

この常温接合には非常に多くのメリットがあります。例えば、

  • 表面粗さと平坦度が確保されれば、どのような素材でも接合が可能。
  • 線膨張係数の異なる異種素材同士の接合も可能。
  • 接着剤、Oリング、ネジ等を使わないため、部品点数を大幅に削減できる。
  • 設計の自由度が格段に上がり、シンプルでコンパクトにできる。
  • 高温にできない部材との接合が可能。
  • 過酷な環境でも劣化する箇所の無い構造が可能。
  • 接合前後で温度変化がないので、加熱による応力が残らない。
  • 大気中で正確に位置決めして接合ができる。
  • 接着剤やろう材に比べて化学的安定性の高い金やチタン等を使用しており、耐食性に優れる。
  • 接合界面は一体化しており空隙がなく、気密性に優れる。
  • 接着材の成分の溶出が問題となる真空容器や理化学機器などの分野においても使用可能。
  • 接合後の洗浄に有機溶剤を使用可能。

まだまだ、当社の考え付かない潜在的なメリットがたくさんあると思います。

期待される用途

各種ビューポート フランジ付きサファイア窓 紫外線・赤外線透過窓
センサーカバー 観察セル 結晶体アレイ 宝飾品・高級時計ほか各種外装部品

その他、薄膜を利用した新たな機能性部品、金属薄膜を積極的に利用した新たな光学部品なども期待されます。試作から対応致しますので、お気軽にお声がけください。あなたのアイデアを形にしてみませんか?

採用事例

サファイアチューブによる流体の観察

ステンレスとサファイアを常温接合することで、 加圧状態の液体や気体の流れを観察可能な高圧セルを開発

従来
  • ステンレス部品、サファイアチューブ、Oリング、ボルト、ステンレスとサファイアの接続部品から成る、多くの部品で複雑な設計となっている。
  • サファイアチューブとステンレスとの間の隙間により流れが変化し、本来の配管内の流体の状態を観察することができない。
改善事例
  • 耐圧硝子工業株式会社様とタイアップし、 特殊技術を応用した加圧状態の液体・気体等の流れを観察できる高圧セルを開発。 シールのためのOリングを使用せず、観察部と配管同士を常温接合で直接接合することにより、流れを乱すことの無いコンパクトな配管可視化部品を実現。食い込み継手仕様により既存配管への取り付けも可能。
  • 可視部に耐薬品性に優れたサファイアを使用することで、多くの液体・気体の観察に使用可能。
  • ステンレス製継手とサファイア製可視部を接合。
  • 最高使用圧力:20MPa
  • 最高使用温度:100℃
  • 外形寸法:外径Φ20mm×長さ120mm
  • サファイア管寸法:外径Φ20mm×内径Φ4mm*
  • 可視寸法:長さ20mm**
  • 材質:サファイア、SUS316

*サファイア管内径はご相談ください。
**可視部長さは最大50mmまで製作可能

常温接合の場合はSUS継手とサファイアチューブの内径が同じであるため、本来の流れを観察できる 実際のサンプル写真

接合事例

サファイア+金属

(a) サファイア直径φ15mm-厚さ6mm、ステンレス外径φ24mm-内径φ5mm-厚さ4mm
(b) サファイア直径φ15mm-厚さ6mm、タンタル直径φ20mm-厚さ3mm

サファイアと金属の常温接合 サファイアと金属の常温接合

サファイア+アルミニウム

金属薄膜の成分調整により、色合いを変化させられます。サファイア30mm□-厚さ0.4mm, アルミニウム30mm□-厚さ0.5mm。(b)のみサファイア厚さ0.04mmです。アルミニウムに貼り付けたまま、サファイアを極薄に研磨しています。 アルミニウムに貼り付けることでサファイアを補強し、極薄の研磨が可能となります。

サファイアとアルミニウムの常温接合

サファイア+ジルコニア

セラミックス同士の接合も可能です。サファイア直径φ33mm-厚さ0.5mm, ジルコニア直径φ20mm-厚さ0.7mm。

サファイアとジルコニアの常温接合

サファイア側から観察

サファイアとジルコニアの常温接合

ジルコニア側から観察

サファイアレンズ+スーパーインバー

線膨張係数の大きく異なる物同士の組合せでも可能です(サファイア5.3x10-6 /K, スーパーインバー0.6x10-6 /K)。サファイアは接合後にレンズ加工を施しています。サファイアレンズ外径φ34mm-R22mm, スーパーインバー外径φ34mm-内径φ24mm-厚さ22mm。

サファイアとスーパーインバーの常温接合

サファイア窓+ステンレス配管パーツ

反応容器内部の様子を確認するためのサファイアビューポートになります。サファイア直径φ26mm-厚さ5mm, ステンレスNPT1”。

サファイアとステンレス配管パーツの常温接合

サファイア窓+サファイア

厚いサファイア同士の接合です。
サファイア直径φ16mm-厚さ5mm, サファイアリング外径φ24mm-内径φ10mm-厚さ2mm。

サファイアとサファイアの常温接合

異形形状でも接合可能です。プレート直径φ36mm-厚さ1.2mm, リング外径φ32mm-内径φ29.5mm-厚さ2mm。

サファイアとサファイアの常温接合(異形形状)

微細構造

常温接合による微細構造

1mmx1mmx9mmの石英ガラスを9個接合しています。

接合特性

接合界面の断面観察

もともとあった金と金の界面(Original surface)は接合によって無くなり、金が一体化しているのが分かります。下地膜としてチタンを成膜していますが、サファイア、チタン、金、ステンレスのそれぞれの界面には隙間が無く、良好な接合状態であることが分かります。

参考文献:M. Ishii, H. Kon, M. Uomoto, T. Nakaya, and T. Shimatsu, ”Room Temperature Bonding of Sapphire with Sapphire or Metal Substrates in Air using Au Films”, The 4th IEEE International Workshop on Low Temperature Bonding for 3D Integration (2014)
常温接合の接合界面の断面観察
常温接合の接合界面の断面観察

接合界面の断面観察

アルミニウムのフランジにサファイア窓を接合した真空装置用ビューポートを作製し、気密性の評価を行いました。He吹きつけ開始後もリーク量は増加せず、基準値1.3×10-11 Pa・m3/sec以下に保たれているため、良好な気密性を保っています。
参考文献:石井, 今, 魚本, 中谷,島津, ”Au薄膜を用いた大気中室温接合技術による超高真空用サファイアビューポートの形成”, 第29回エレクトロニクス実装学会春季講演大会予稿集, pp.197-198 (2015年)

アルミニウムのフランジにサファイア窓を接合した真空装置用ビューポート
リークテストチャート

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