PROJECT STORY

プロジェクトストーリー

業界初内周面精密測定機の開発プロジェクト
中小企業庁長官賞受賞
(第32回中小企業優秀新技術・新製品賞 主催 りそな中小企業振興財団 日刊工業新聞社)
PROJECT MEMBER
淺田 隆文
モーター事業部ユニット技術
本部OCT部 技術顧問
森本 正人
モーター事業部ユニット技術
本部OCT部
山﨑 大志
モーター事業部ユニット技術
本部OCT部 部長
成田 憲士
モーター事業部ユニット技術
本部OCT部
(技術開発担当課)担当課長
舘山 拓也
モーター事業部ユニット技術
本部OCT部
(技術開発担当係)担当係長

PROJECT TIME LINE

2013年12月

開発契機

工業界において製品の加工精度の高まりに伴い、新たな測定機が必要になっていた。当社取引先を中心に複数の大手企業を訪問したところ具体的な開発要求を受理した。
2014年6月

開発体制

社内に開発プロジェクトの起案を行い、開発体制は当社が得意とするマイクロモータと光学設計技術者を中心に、ソフトウェアと設備システム技術者が新たに加わり構築。
2014年~2017年

原型開発

2015年からは開発テーマが経産省のサポイン事業に認定され、産総研光研究部門が開発に加わり光情報の高速画像処理技術等が伝授され商品性能が飛躍的に向上した。
2017年6月

市場開拓

県の企業支援各部門の協力を受け、原型開発品を機械要素展(2017年)と自動車関係技術展(2018年)に参考出展した。その結果として、大手精密軸受と大手自動車メーカから具体的な引き合いを受理。
2019年1月

新発売

2019年1月に新発売し、当社ホームページに測定機の紹介を掲載開始。卓上型精密測定機の第1号は大手軸受メーカ、インライン設備用測定機の第1号は大手自動車メーカに納入達成。
2020年4月

受賞

発売開始してから、5台の販売実績が得られた時点で中小企業優秀新技術・新製品賞(日刊工業新聞社、りそな銀行主催)の審査において最優秀賞(中小企業庁長官賞)を受賞。市場への大きなPRとなった。
2021年~

直近トピックス

測定機の新たな用途として内表面のポーラス測定機能を追加。また測定機単品の販売に加え検査システムとしての受注対応も開始。順調な開製販が回せるようになった。

イントロ

全国から約380件の応募があった「中小企業新技術・新製品賞」の審査結果が1本の電話により知らされました。2020年4月、当社の「内周面精密測定機」が最優秀賞に選ばれたとの嬉しい知らせでした。この測定機は外径0.9mmの世界最細径の回転式光スキャナーを工業界で広く使用されている精密軸受等の加工穴に挿入することで、内周面の加工精度を20ナノメートル(1mmの5万分の1)の高精度に測定でき、さらに内表面のポーラスや凹凸状態を測定して数値化できる新しい光学式測定機です。

この光学式測定機は主に、カラー複写機に内蔵される動圧軸受など精密軸受の工場、また、自動車の主要部品である変速機やエンジン部品などの工場に導入されています。

外径0.9mm光プローブ
精密動圧軸受の加工穴

当社の強み技術と業界ニーズ

近年、工業界では情報機器に内蔵される新しい精密軸受や、自動車のエネルギー消費の改善に向けた新しい機械部品が生産されており、それら製品の性能と品質向上の為には新たな精密測定機が望まれています。

当社では2009年に内視鏡用の外径0.9mm細径モータを、また2010年にはこれを用いた回転式光プローブの開発を既に完了しており、これら保有技術に「光干渉光学系の内製化技術」と「画像処理ソフトウェア技術」を加えれば「新たな光学式内周面測定機」が商品化できることが分かっていました。

独自の測定方式:石英パイプ基準測定方式の開発コンセプト

新たな精密測定機の開発にあたり、業界からは大きく2つが期待されていました。

1つは細径の精密軸受内径や焼結軸受内径の測定ニーズでした。当社はこの要求に対して自社技術の外径0.9mmの極細モータを組み込んだ回転光プローブを開発する事で解決できました。

もう1つは測定機自体の精度の向上でした。業界で要求される測定精度(繰り返し測定再現性:シグマと呼ばれる)は、昨今の精度のトレンドが示すように20ナノメートルの高精度が要求されていました。しかしながら、従来の多くの測定機は「機械の母性原理」と呼称される、光プローブを回転走査する時の振れ変化や振動の影響で、目標とする測定精度の達成が阻害されていました。

そこで当社はこの課題に対し、開発プロジェクトメンバーでアイデアを出し合い「石英パイプ基準測定」という新たな測定方式を考案しました。これは、外径0.9mmの石英の極細薄肉パイプの中で、0.6mmの極小径の回転ミラーを当社独自のモータで回転させ、近赤外光を被測定物の内周面に放射することで、得られる干渉光を取得してナノメートルレベルの高精度な測定を行うもので、回転ミラーの回転振れ変化が測定値に影響しない当社独自の方式です。

測定機の高精度化トレンド(クリックで拡大)

社内プロジェクト起案と産学協力体制

しかしながら、社内で測定機の開発プロジェクトを起案したものの、先に説明したように当社が保有していない2つの重要技術を導入しないと商品化は不可能でした。その中で、関係先であった産総研東北センターから同つくばセンターの光研究部門をご紹介いただき、技術指導を受けたことで、商品開発が一挙に加速されました。

山﨑部長の声
私は長年光学機器の設計を担当してきました。本プロジェクトでは光学設計を進めながら、測定機全体の要素技術をまとめ、その中で、お客様のニーズをいち早く把握し、メンバー内で測定技術およびアプリケーション開発を先回りで開発するよう努めました。
舘山さんの声
入社して10年目を迎えました。当初プロジェクトに参画した頃は測定原理も十分理解出来ない部分もありましたが、先輩諸氏の教えも請い、今は装置のソフトウェア開発を任されています。

精密軸受業界での活用、自動車業界での活用

新開発の測定機は2019年1月に発売を開始し、販売促進には、開発者ら自身も複数の精密軸受メーカ、自動車メーカに技術紹介に回りました。当初はお客様の測定ニーズにマッチしない点も多くありましたが、一方でお客様から具体的なニーズや詳細な要求仕様を聞き出すことができました。そして測定機に複数の新たな機能を付加するアプリケーション開発を充実させました。結果、精密軸受の測定用途には新たに内周面の動圧溝パターンの測定機能を開発、また自動車部品用途には、内周面のポーラス測定機能と3D形状表示機能を新たに完成し、改めてお客様に紹介して回りました。お陰様で当社の測定機は「内周面を、非接触3D、20ナノメートルの高精度で、高速25秒で、自動測定できる測定機の基本機能」の充実と共に、「内周面のグルーブやポーラス測定機能」を追加し多くの大手企業に納入し、お客様のものづくりに役立っています。

エンジン用測定機
卓上型測定機
インライン用測定ユニット
小型可搬型モデル
成田さんの声
光プローブの設計を担当しています。お客様からの多様な測定課題に対応する光プローブを標準化を考慮しつつ品揃えしています。また要となる光学部品の微細加工技能も自前で腕前を磨いています。
森本さんの声
測定機と加工機の精密メカニズム設計を中心に長年関わっています。各地の工場のお客様に対して、新しい設備ユニットを納めてきました。先日ある現場で20年前に私が設計して納めた機械が大事に使われ元気に稼動しているのを見て大変嬉しく思いました。今回の精密測定機を通してもお客様との良い信頼関係が構築できました。

技術者スピリット

私たちは機動力と独自技術を生かし、業界から求められる新製品の技術開発にチャレンジしています。本プロジェクトはもちろん、製品開発を通して自分の技術を生かしてお客様のお役に立てたとき、やりがいを感じると共に自己成長につながっていることを改めて感じることができました。

淺田 技術顧問
企業における商品開発はその市場性、自社の保有技術、独自性(知財権)は必要条件にはなりますが、各メンバーの熱い想いこそがより良い商品開発の原動力になるように思います。